Nirvanaカート・コバーンの機材特集:ジャガー、ムスタング、DS-1、Small Cloneで作る荒い美学

Nirvanaのカート・コバーンの音は、いわゆる高級機材の見本ではありません。むしろ、安いギター、改造されたオフセット系、強く踏んだ歪み、揺れるコーラス、壊れそうなアンプの組み合わせから生まれた「荒いのに忘れられない音」です。

ただし、カートの機材は時期によってかなり変わります。Bleach期、Nevermind期、In Utero期、ツアーごとの交換機、壊れた個体、改造されたピックアップ。この記事では、確度が高い定番機材を中心に、カートの音作りを整理します。

Nirvanaのメンバー写真

カートの音は「高級」ではなく「機能的」だった

カートは、ヴィンテージギターの完璧な保存や、アンプの細かいセッティングに執着するタイプではありませんでした。むしろ、壊れても交換できること、改造して出力を上げられること、ライブで強く弾いても音が前に出ることが重要でした。

Guitar Worldの機材ガイドやLive Nirvanaの機材資料では、Epiphone ET-270、Univox Hi-Flier、Fender Mustang、Fender Jaguar、Jag-Stangなど、さまざまなギターが時期別に登場します。共通するのは、一般的な王道レスポール/ストラトではなく、少し外れたギターを大きな音で鳴らしていたことです。

初期:Epiphone、Univox、安価なギターの時代

Bleach期のカートは、Epiphone ET-270やUnivox Hi-Flierなど、比較的安価で癖のあるギターを使っていました。これらは現代の視点で見ると「狙って選ぶオルタナ系ギター」ですが、当時は手に入りやすい変わり種でもありました。

この時期の歪みはBOSS DS-1の存在が大きいです。DS-1は安価で頑丈、しかも強い歪みが出ます。細かいニュアンスより、バンド全体を押し切るための歪み。Nirvanaの初期衝動には、この単純さが合っていました。

Nevermind期:Jaguar、Mustang、DS-1、Small Clone

Fender Mustang 商品イメージ

一般的にカートのイメージとして強いのは、Fender JaguarとMustangです。FenderのJag-Stang公式ページでも、JaguarとMustangがNevermindツアーやSmells Like Teen Spiritのビデオで象徴的だったことが説明されています。

Jaguarは改造され、ハムバッカー化されていました。シングルコイルの繊細さより、強い歪みに耐える出力が欲しかったと考えると自然です。Mustangは、ショートスケールで取り回しがよく、Smells Like Teen Spiritのビデオの印象も強烈です。

この時期の音作りで欠かせないのが、BOSS DS-1とElectro-Harmonix Small Cloneです。DS-1で荒い歪みを作り、Small CloneでCome As You Areのような水っぽい揺れを作る。この2台だけでも、かなりNirvanaらしい入口に近づけます。

DS-1からDS-2へ

BOSS DS-1 Distortion 公式製品画像

カートは後期にBOSS DS-2 Turbo Distortionも使っています。DS-2はDS-1の延長にあるペダルですが、Turboモードで中域の押し出しが変わり、ライブで前に出しやすい音になります。

ただし、初心者がNirvana風の音を作るなら、まずDS-1かDS-2のどちらか1台で十分です。重要なのはペダル名より、ゲインを上げすぎた音を、バンドの中でどう成立させるかです。Toneを上げすぎると耳に痛く、下げすぎると埋もれます。

Small CloneとPolychorus

Electro-Harmonix Small Clone 公式製品画像

Small Cloneは、カートのクリーン/クランチ系の揺れを語るうえで外せません。Come As You Areのイントロのような、少し不安定で水中のようなコーラスは、Nirvanaのメロディ感と非常に相性が良いです。

一方、In Utero期にはElectro-Harmonix PolychorusやEcho Flanger系の、より極端な揺れも語られます。Heart-Shaped Box周辺の不穏な質感は、きれいなコーラスというより、音程が歪むようなモジュレーションの世界です。

アンプ:Mesa、Fender、Marshallキャビネット

Nevermind期のスタジオ/ライブ周辺では、Mesa/Boogie Studio Preamp、Crownパワーアンプ、Marshallキャビネットなどが語られます。ライブではFender Twin Reverb系や、時期ごとのさまざまなアンプも情報として出てきます。

カートの音を再現する上で、アンプは「きれいに歪ませる」より「大きい音で荒さを支える」方向です。自宅では大音量アンプの代わりに、アンプシミュレーターでクリーン〜クランチの土台を作り、DS-1/DS-2とコーラスを足すのが現実的です。

今Nirvana風を作るなら

最小構成は、ハムバッカー搭載のオフセット系ギター、BOSS DS-1またはDS-2、Electro-Harmonix Small Clone、クリーン寄りのアンプです。ギターは本物のJaguar/Mustangでなくても構いません。重要なのは、強く弾いたときに音が潰れすぎず、コードの輪郭が残ることです。

セッティングは、歪みを最大にするより、バンドで聴こえる中域を残すのがコツです。コーラスは深くしすぎると酔うので、曲の中で「不安定さ」が欲しい場所だけ踏むと効果的です。

まとめ

カート・コバーンの機材は、単なるヴィンテージ趣味ではありません。安いもの、壊れやすいもの、改造されたものを、自分の音楽に必要な形で使った結果です。だからこそ、同じ機材を買うよりも、荒さ、メロディ、ダイナミクス、壊れそうな緊張感をどう作るかが大事です。

アルバムごとの音の違い

Bleachは、低予算で録られた荒い音が魅力です。ギターは太く、ざらつきがあり、曲によっては音の分離より勢いが勝っています。ここではDS-1的な強い歪みと、安価なギターのラフさがかなり重要です。

Nevermindは、荒さを残しながらもプロダクションが整理されています。Smells Like Teen Spiritの強烈なコード、Come As You AreのSmall Clone、Lithiumの静と動の差。カートの機材は荒いのに、曲の中では配置がかなり明確です。

In Uteroでは、より生々しく、不穏な質感が前に出ます。きれいな音より、耳に残る違和感を重視したようなサウンドです。Polychorus系の揺れや、アンプ/マイクのざらつきも、ここでは美点になります。

コピーするときに間違えやすいこと

一番の失敗は、歪みを深くしすぎることです。Nirvanaは荒いですが、コードの動きやリフの輪郭が残っています。Distortionを最大にしてToneを上げすぎると、ただ耳に痛いだけになりやすいです。

次に、コーラスを常に深くかけること。Small Cloneは象徴的ですが、全曲ずっと水っぽいわけではありません。イントロ、静かなパート、印象的なリフだけに使うから効きます。歪みとコーラスのオン/オフで曲の構造を作るのがコツです。

おすすめの現代的な代替機材

ギターは、Fender/SquierのMustang、Jaguar、Jag-Stang系、またはハムバッカー搭載のオフセット系が候補です。完璧な同型より、弾きやすさとチューニング安定を重視したほうが実用的です。

ペダルは、BOSS DS-1、DS-2、Electro-Harmonix Small Cloneが王道です。アンプは、クリーンヘッドルームがあるコンボやアンプシミュレーターで十分。MesaやMarshallキャビネットをそのまま揃えるより、曲の中で必要な荒さと中域を作るほうが大事です。

Nirvana – Smells Like Teen Spirit 公式YouTube